FC2ブログ

記事一覧

教養本のすすめ その4

現在、私は医師になった。当然、恵まれた地位にいることは自覚している。もっとも、恵まれた地位にいることをほとんど自覚していない、私以上に恵まれた医師は日本に無数にいる(私に言わせれば、そんな奴ばかり医師になる社会を日本人が許容しているからだ)。
ブラック企業にいた頃の同僚について、たまに近況を知ることがある。「若者と労働」(濱口桂一郎著、中公新書ラクレ)に書かれている就職超氷河期時代に見事にはまっている世代なので、ろくな人生を送っていない。大抵は、親の援助を必要とする期間がある。余談であるが、親の保護さえ受けられない者は、自殺したり、犯罪者になったり、精神病院に入院していたりするのだろうか。
ブラック企業の元同僚たちと私の差はなにか、と考えると、元同僚たちがテレビを観たり、なけなしの金で風俗に行ったり、旅行や買い物で散財したりしている時、私だけは教養本を読み続けていたことだ、と思う。いつの間にか、本を読む速度が上がり、英語で外国人を納得させるだけの理屈を並べられるようになり、世界史のセンター模擬試験で9割未満がとれなくなった。それだけでなく、私は私のいる世の中の仕組みを知ることができた。20才くらいの頃、私は世の中の仕組みを全く知らなかった。なんで創価学会の政党が政権与党になっているのか、全共闘時代に東大にたてこもった学生たちはなにをしたかったのか、中国ではなぜ一党独裁政治をしているのか、世界中の人たちは生まれで幸不幸が決まる理不尽をどうして許容しているのか、などなど、私には完全なる謎だった。教養本の読書により、私は世の中の仕組みを一つずつ知ることになる。
マスコミが言うほど、政治家がバカでないことも分かった。いや、より正確に言えば、政治家はその地位にふさわしいほどの知性や倫理観を持っていないが、それでもほとんどの日本人よりマシであることは間違いなかった。政治家に限らず、学者も、弁護士も、医者も、大多数の一般人と比べると、格段に知性も倫理観も高かった。そんなインテリ階級には、知性と知性を求める意欲を評価してくれる人が下層階級より遥かに多いことを知った。そのインテリ階級に認めてもらうためには、自分もインテリになるしかない。
もしブラック企業の元同僚と同様に、私が目先の快楽だけを求めていたら、当時の状況から目を逸らすことはできても、根本的に抜け出すことはできなかっただろう。バカがインテリになることは容易ではないし、多くの者は最初から諦めるだろうが、それは社会的にも本人にとっても好ましいことではない。私はクリスチャンではないが、教養本の多読からいつの間にか覚えた新約聖書の一節が、たまたま今回の私の主張と似ているので、引用させてもらう。
「狭き門より入れ。 滅びにいたる門は大きく、その路は広く、これより入る者は多し。 生命にいたる門は狭く、その路は細く、これを見出すものは少なし」(マタイの福音書より)
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント