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子どものために子どもの過剰診療をやめるべきである

「日本で最も無駄な医療は高齢者医療である」と考えている人は多いでしょう。統計的にも、人口の27%の65才以上の高齢者に6割の医療費が使われています。もう先が長くないし、社会に貢献できる可能性が少ない高齢者に1年間で25兆円もの費用が使われているのは、誰が考えても無駄でしょう。私も病院で70代のがん手術ばかり見ていると「高額の手術費を考えれば、放っておいてもいいんじゃないか」という気になります。もっとも「死すべき定め」(アトゥール・ガワンデ著、みすず書房)を読むと、アメリカでも「その前に他の原因で死ぬ可能性が十分あるのに、体力の消耗するガン摘出手術をしている高齢者」の例が少なくないらしいので、日本だけの問題ではないようです。そんな高齢者に費やす金があるなら、将来のある小児の医療費でも充実させてあげるべきだ、と私も以前は考えていました。
しかし、現場で働くようになってから、小児も負けず劣らず過剰医療が行われていることを知りました。私の自治体が最近流行りの小児科医療費無料を実施しているせいもあるのでしょうが、「修学旅行があるから、トラベルミン(バスの酔い止め)出してください」と親が臆面もなく薬局で売っている市販薬を要求するのを医学生時代に見て、唖然としたことがあります。ひどい親になると、「子どもは学校があるから」と、親だけ小児科に来て、そんな要求を言ってきます。本人が来ない場合、「無診察治療になり違法です」と断るべきですが、現実には処方している小児科医がいます。
私の実感でいえば、「こんな症状では病院に来ても治療のしようがない」「家で栄養とって寝ていてください」と言いたくなる患者は、高齢者よりも小児が圧倒的に多いです。そして、医学的事実を伝えて、最も納得してくれないのが、軽症の小児を連れてくる親です。「子どもを助けるのは親の責任」「自分のことよりも子どもが百倍心配」というのは分かりますが「理性を失っている」「こんな人と結婚したいと思う人が世界に一人でもいたのか」と思ってしまう親に病院で多く会います。
私事になりますが、「食事が摂れているなら、風邪やインフルエンザで病院に来る必要はありません」「インフルエンザは薬を使わなくても治ります」「血液検査なしで、症状だけで風邪か肺炎かを確定できません」という医学的事実を根気よく伝えているのに、途中で理解できなくなったと、逆ギレされたのも小児の母親でした。後で、その夫が病院にクレームの電話をかけてきて、「院長出せ」とまで言ってきました。さすがに病院ではモンスター・ペイシェントと相手にせず、私がそのせいで叱責されることもありませんでしたが。
そんな事件が起こる原因の一つは、開業医や小児科が無駄な医療、過剰医療を小児に行っているからです。上のような科学的事実を伝えるのは、医師の債務のはずです。また、親たちも本当に子どもが心配だったら、医師に全てを任せるのではなく、納得のできる説明を医師に求めるべきでしょう。上の母親などは医師の説明を嫌って「先生はどうしたいんですか?」と何回も聞いてきましたが、それは小児に限らず、医療を受ける態度として不適切です。
医師は適切と思える治療の選択肢を全て示し、それぞれのメリットとデメリットを患者さんに分かるように説明するのが仕事です。最終的に決断するのは、その治療の責任(不利益)を負う患者さん自身です。そんな姿勢は医学部で何百回も学んだ医療の基本中の基本です。しかし、この基本中の基本の医療がまだまだ日本では広く実施されていません。昔ながらのパターナリズム(医師が上位の立場から全てを決める医療)を望む患者さんが少なくないからです。昔の医療から抜け出せない高齢者はまだしも、若い子育て世代にまで、そんな価値観の人がいるのは残念です。子どもたちに、そんな親を見て育ってほしくありません。
病院やクリニックに軽症の子どもを何度も連れていくのは、子どもをかわいがりすぎることにもなります。「破滅―梅川昭美の三十年」(毎日新聞社会部、幻冬舎)にあるように、日本史上最悪の銀行強盗事件を起こした梅川は子どもの頃、ちょっとした病気でも親に診療所へ連れていかれたそうです。「こんなに甘やかしてどうする」と医者が思っていたら、梅川は大人になって銀行に立てこもり、女子行員を裸で並ばせて盾にして、銀行員に同僚の耳をナイフでそぎ落とさせています。これは極端な例ですが、子どもをかわいがりすぎたら、子どもをダメにしてしまうことは誰でも知っているでしょう。子どものために、未来のために、子どもの過剰診療は控えるべきです。
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日本人らしくない発想をする日本人=日本で生きづらい日本人

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