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新幹線の不毛な議論

2019年10月17日の朝日新聞の「耕論」は、日本でよくある不毛な議論でした。
新幹線推進派の石破茂は次のように主張していました。「太平洋側は東南海・南海トラフの大地震の発生が予想されているので、そこだけに新幹線があるのは日本の危機管理上よくない。日本海側にも新幹線を作り、肩代わりすべきだ」「最も出生率が低い東京に人を集めるのではなく、地方分権を進めるためにも、新幹線を造るべきだ」「建設費を安くするため、山陰や四国の新幹線の走る間隔は30分に1本にして、単線にする。電池で走る列車を開発すれば、列車に電力を送る架線がいらず、トンネルも小さくできる。貨物も運ばせたり、夜行でも走らせたりするなど、目いっぱい活用すればいい」
一方の新幹線反対派は次のように主張しています。「巨額の建設費だけが問題なのではない。いったん整備すれば、維持管理に多額の経費が必要となり、今ある路線すら残せなくなる」「現在、ビジネスとして成り立っている新幹線は、利用者が多い東海道、山陽、東北の東京―仙台ぐらい。それ以外は運賃収入でインフラを維持できない。2016年に開業した北海道新幹線の新青森―新函館北斗は、1日1キロあたりの平均利用者数が18年度で4900人ほど。東海道の27万人、山陽の8万人、東北の6万人と比べてきわめて少ない。旧国鉄時代に定められていた『4千人以下は原則路線廃止』という基準を上回っているとはいえ、すれすれの水準だ」「本州と北海道を結ぶ青函トンネルは巨額の維持費をかけるに値せず、いずれ閉鎖し、北海道新幹線は廃止した方がよい。推進派は『30年に札幌まで全面開業して東京からの所要時間が4時間を切れば、利用者は増える』と訴えるが、現在、東京と札幌を行き来する交通手段は飛行機で、所要時間は1時間40分ほど。たとえ新幹線が4時間の壁を破ったところで、どれだけの人が移ってくるのか。そもそも、飛行機から鉄道に乗り換えさせるために、なぜ税金を投入しなければならないのか」「北海道と同様に利用者が少ない九州、北陸、上越の高崎―新潟といった新幹線も将来残せるかどうか。JR東日本の場合、利用者が多い山手線や東海道線など首都圏在来線のもうけを充てれば維持できるだろう。ただ、JR九州はもちろん、JR西日本ですら稼げる路線が少なく、将来、人口減少で利用者が減れば、自力で支えるのはいっそう難しくなる」
なぜ私がこれを不毛な議論とみなすかというと、意見の根拠がほとんど示されておらず、真偽の検証もされていないからです。「日本海側の新幹線が太平洋側の輸送を肩代わりできるのか」「人口を東京から地方に移すために新幹線が有効なのか」「石破茂の言う通りにすれば、新幹線はどれくらい黒字になるのか」「新幹線の維持管理費は1日1kmあたり何人必要なのか」「人口減少に従って、どれくらい新幹線利用者は減っているのか」「東海道、山陽、東北の東京―仙台以外は運賃収入でインフラを維持できない根拠はなにか」など疑問点がいくつもあります。
もちろん、この記事を読むくらいの方なら、日本海側の新幹線が、日本海側の道路や空港以上に、太平洋側の輸送を肩代わりできるはずがなく、人口を東京から地方に移すために新幹線が無効であることくらい分かるでしょう。しかし、「石破茂の言う通りにすれば、新幹線はどれくらい黒字になるのか」は不明のはずです。おそらく、石破の案でも人口減少する山陰地方で、新幹線の維持費を払えるはずがない、とは推測しますが、「電池で走る新幹線」などの新技術の話になると、ほとんどの人は見当がつかないでしょう。もしそれで黒字になり、建設費も十分に賄えるのなら、反対する理由はないはずです。
だから、石破が本当に新幹線を造りたいのなら、根拠となる数値を示すべきです。朝日新聞もこの記事を「耕論」と呼ぶくらいなら、石破の主張通りで新幹線を維持できるか調べるべきでしょう。この記事で新幹線増設の推進か反対を決めるとなると、「事実がどうであるか」ではなく、「誰が言っているか」で決めてしまうことになりかねません。それでは、いつまでたっても、日本人は科学的思考が身に着きません。
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日本人らしくない発想をする日本人=日本で生きづらい日本人

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